はじめに
毎日ゴシゴシ磨いているのに、それでもムシ歯や歯グキの悩みは尽きない。
これでは中学・高校と6年間も学習したはずなのにモノにならない英語よりひどい。
そんな人々に歯ブラシのテレビCMは「当社新製品こそがベスト」と訴えかける。
「一生自分の歯で食べよう!」そう決心してもいざ洗面台に行くとすぐあきてしまう。
その上、奥歯をよりていねいに磨こうとすると気分まで悪くなってしまう。
そんな場面が多いのではないでしょうか?
歯周病は全身の健康にも影響を与える
最近の歯周医学では、歯周病菌が全身の健康に影響を及ぼすことに着目しています。口の中だけでなく実は体内のあちこちに触手をのばしているのです。
気管から侵入する。血管を通じて全身に運ばれる。これを、歯周病菌連鎖と呼びます。具体的には、動脈瘤や動脈硬化の患者さんのうち70%以上の人々の病変部から歯周病菌が見つかっています。心内膜炎、糖尿病、骨そしょう症なども見つかっています。女性の場合、早期出生低体重児出産などにも関与していることがわかってきました。
バイオフィルムとは
歯周病菌は、歯と歯グキのすき間に増殖します。この歯周病菌巣を、バイオフィルムと呼びますが、フィルム上に強固に付着するという特徴があります。
バイオフィルムが成長すると、より強固なフィルムになり内側ではどんどん毒素を産出していきます。1グラムあたり、1兆〜2兆。驚異的な数の菌がその内側にいることが、最新の研究から明らかになりました。(写真1)
効果的な歯周病の予防法とは
@夜、寝る前に歯ブラシをすることを習慣にする。その日の食事で歯のすき間には食べカスが存在しています。その食べカスが、歯周病菌巣砂割バイオフィルムを形成するのです。
歯ブラシはペンを持つようにホールドし、斜め45度の確度で歯グキに軽く当て振動させます。1本ずつ歯と歯グキの境界を磨いたら、次は歯の表面と裏側、そして奥歯も磨きます。
あくまでも、軟らかい歯グキを優しく軽く当てていくことが大事です。
大切なのは、力いっぱいゴシゴシするのではなく、小刻みに歯ブラシを動かして触っていくという感覚です。
歯ブラシを最後に、舌の表面に当てて軽く磨いて下さい。歯周病や口臭の原因となる菌を除去することができます。
A歯ブラシ以外の補助器具も使ってみる。歯グキのさがっていない人はデンタルフロスを使う。少し歯グキが交代しているなと思う人は歯間ブラシを使ってみる。ブリッジや部分入れ歯を装着している人も歯間ブラシを使ってみる。
補助器具というより、デザインを変えた歯ブラシなのだと考えて下さい。
ドライバーもアイアンも、そしてパターもあってゴルフクラブのワンセットなのです。いろいろなデザインが必要に応じて生まれてくるのです。
デンタルフロスは、滑りのいいワックスタイプと、しっかり除去したい人向きのノンワックスタイプと2種類あります。歯グキのさがり方や歯間の広さで選べばよいでしょう。ペパーミントフレーバーやシナモンフレーバーなど、さわやかな香りが楽しめるタイプの製品もあります。
慣れている人は、より汚れを強く取り除く事ができるスーパーフロスとかデントテープといった製品もあります。
いきつけの歯科医院で、どのデンタルフロスが良いのかアドバイスをもらって手に入れる前の参考にして下さい。
歯間ブラシは、ヘッドの小さい超極細タイプがおすすめです。ゆっくりと歯と歯の間に挿入し、力を入れずに10回くらい動かします。
出血しても心配ありません。歯周病菌を分解した血液成分が外へ出てくるだけなのです。食べカスやバイオフィルムが除去できれば、出血しないひきしまった歯グキに再生していくのです。
歯ブラシは「やっぱり面倒臭い」という自分の心の内部の感情を押えて「一生自分の歯で食べよう」という理性の側へ心を傾斜させて下さい。
本当の敵は、バイオフィルムではなく心の内に強く生きている「面倒臭い」、「歯や歯グキの病気で死ぬことはない」という深層心理という感情ではないのではありませんか? |